自動車の回送運行許可
自動車が合法的に運行するためには、原則として道路運送車両法の諸規定を満たしている必要がありますが、「回送運行の許可」「臨時運行の許可」を取得すると次のことについて適用を受けません。
①自動車登録ファイルに登録を受けていること
②自動車登録番号標(ナンバープレート)を正しく表示し、識別できること
③有効な自動車検査証の交付を受けていること
④自動車検査証を備付、検査標章(フロントガラスの車検ステッカー)の表示
つまり、自動車登録を受けていなくとも、
ナンバープレートを表示していなくとも、
自動車車検証の交付を受けていなくても、
車検有効期限のステッカーを張っていなくても
運行できるということです。
このページでは題目のとおり「回送運行の許可」について述べていきます。
■「回送運行の許可」・・・・道路車両運送法第36条の2第1項
例えば、陸送業者、自動車販売業者、特定整備業者(*1)等は、業として自動車の移動をしなければならない場面があります。しかし、未登録自動車、一時抹消登録済自動車、車検切れの自動車は先述のとおり合法的には運行できません。
よって、例示した業者は「回送運行の許可」を取得することで、複数の自動車に使用可能な許可証、登録票(ナンバープレート)等の貸与をしてもらい、最長5年間(申請時の状況や行政側の裁量により異なります。)に亘って経路を限定されず、目的に沿った運行ができるようになります。
■「回送運行の許可」を受けるためには、次の手続きが必要となります。
1⃣ 営業所所在地を管轄する運輸支局長を経由して北海道運輸局長に対し、
許可申請書提出
2⃣ 現在事項全部証明書(個人は住民票の写し)(*2)
3⃣ 11項目(*3)を規定した社内取扱内規
4⃣ 許可証等を適切に管理することの書面
5⃣ 自動車の製作、陸送、販売又は特定整備を業とすることの書面
6⃣ 自動車の製作、陸送、販売又は特定整備の実績等を証する書面
(*1) 道路運送車両法施行規則第3条
(*2) 許可申請日から3カ月以内
(*3) 自動車の回送運行の許可事務等の取扱要領 第4条(2)ロ
北海道陸運局平成17年5月24日北技管第23号
■許可基準として
[1] 法令、通達及びこの要領(上記*2)の定めを順守して回送自動車の運行の
用に供すると認められること
[2] 許可証等を適切に管理すると認められること
[3] 自動車の製作、陸送、販売又は特定整備を業とする者であること
[4] 特定整備を業とする者は、許可申請を行った日の直前の連続した2年間
及び申請を行った日から許可を受けるまでの間に自動車整備事業に関し
「自動車整備事業者に対する行政処分等の基準について(平成18年3月
2日付け国自整第126号)」に基づく行政処分を受けていないこと
[5] 新規許可については、本要領第6条第2項の許可基準(*4)に適合している
[6] 継続許可については、本要領第6条第3項の許可基準(*5)に適合している
[7] その他必要と認められる事項
(*4) 新規申請者の許可基準
1. 製作を業とする者は、許可申請を行った日の直前3カ月における月平均
製作台数が10両以上
2. 陸送を業とする者は、許可申請を行った日の直前3カ月における月平均
陸送台数が30両以上であり、回送業務総体での常用運転者が7人以上
3. 販売を業とする者は、許可申請を行った日の直前3カ月における月平均
販売台数が10両以上
4. 特定整備を業とする者は、許可申請を行った日の直前1年間の法第35
条(*6)の臨時運行許可に基づく運行実績が7台以上
(*5) 継続申請者の許可基準
1. 製作を業とする者は、許可申請を行った日の直前3カ月における回送運
行許可番号標使用実績が月5件以上
2. 陸送を業とする者は、申請許可を行った日の直前3カ月における回送運
行許可番号標使用実績が月平均20両以上であり、回送業務総体での常
用運転者が7名以上
3. 販売を業とする者は、許可申請を行った日の直前3カ月における回送運
行許可番号標使用実績が月平均5両以上
4. 特定整備を業とする者は、許可申請を行った日の直前3カ月における回
送運行許可番号標使用実績が7台以上
(*6) 法第35条の臨時運行の許可
自動車運送車両法第35条 「臨時運行の許可」
■回送運行の許可を取得した後
「許可証の交付と番号標の貸与」に関する手続きが別途必要となります。
本要領第4章第16条以下、許可を得たのちの手続きが規定されています。
すなわち「許可証の交付」と「番号標の貸与」を受けるために、別途申請手続きが必要となります。
■「許可証の交付及び番号標の貸与申請」では次の手続きが必要となります。
1⃣ 営業所を管轄する運輸支局長に対し、回送運行許可証の交付及び回送運行 許可番号標の貸与申請書(以下、交付等申請書)提出
2⃣ 交付等申請書に「回送運行許可証の交付及び番号標の貸与表」、「実績等
計画書」、特定整備を業とする者は「営業所毎に各地方自動車整備振興会
会員であることの書面」又は「運行実績を証する書面」を添付
3⃣ 自動車損害賠償責任保険証明書を提示(保険期間は回送運行許可の期間を
充足していること)
■審査基準として
[1] 回送の目的が許可の範囲内であること[2] 特定整備を業とする者は、許可申請を行った日の直前の連続した2年間
及び申請を行った日から許可を受けるまでの間に自動車整備事業に関して
「自動車整備事業者に対する行政処分等の基準について(平成18年3月
2日付け国自整第126号)」に基づく行政処分を受けていないこと
[3] 許可証の交付等の枚(組)数が基準(*7)に適合していること
[4] 自働車損害賠償責任保険証明書の書面の提示又は提出
[5] 手数料が納付されていること
[6] その他必要と認められること
(*7) 許可証の交付等の基準
制作業者 省略
販売業者 1か月の平均販売車両 10両以下 1組(枚)
20両以下 2組(枚)以内
21~30両以下 3組(枚)以内
31~40両以下 4組(枚)以内
41~50両以下 5組(枚)以内
以下10両増すごとに1組(枚)加算
陸送業者 直接陸送業務に従事する運転手1~2名につき1組(枚)
特定整備業者 営業所毎に交付(貸与)申請を行った日の直前1年間の法 第35条の臨時運行許可に基づく運行実績が7台以上
(2回目以降の許可の場合は交付(許可)申請を行った日
の直前1年間の回送運行許可に基づく実績が7台以上)で
ある場合 1組(枚)
■その他
許可証の有効期限の管理
許可証の有効期限を管理し、返納する場合には期限までに手続きを行わね
ばなりません。
許可証等の保管方法等
許可証等が無断使用されないよう厳重に管理し、き損、紛失、盗難がないよ
う台帳管理が必要です。また許可証等を使用させるときは許可証及び番号
標の管理簿を作成し、使用と返却を管理しなければなりません。
その他、社内取扱内規、管理責任者選任等といった体制構築・維持管理が
必要となります。
定義と目的・・・・北海道運輸局HPより一部引用
回送自動車の定義 | 回送の目的 | |
陸 送 | 他人から委託を受け、指示された場所間を回送する自動車 | 委託者の指示する場所間の回送 |
販 売 | 自己の販売しようとする自動車の展示・整備・改造、販売した自動車の納車、仕入れた自動車の引き取り、販売・仕入れに伴って必要となる車検・登録・封印のため回送する自動車 | 自己の営業所と仕入先、納品先、自動車置場、車体架装工場、整備工場、展示場、顧客所在地、運輸支局間の回送 |
特定整備 | 車検のために回送する自動車 | 車検のために自ら特定整備しようとする自動車の引き取り、車検のために自ら特定整備した自動車の引き渡し、車検のために自ら特定整備した自動車の車検場までの回送 |